「女性起業家・創業チームに女性がいる企業」のみに投資する海外VC

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<Blog移行に伴ってお引越ししてきた記事です🗒 2021/12/24>

たまたま、”Meet the UK’s first VC firm dedicated to female founders”というSiftedの記事を読みました。

こちらのPink Salt Ventures(以下PSV)はイギリス初の、女性起業家(正確にはFemale-ledの企業)にのみ投資することを明言しているVCとのことです。

今回記事を読んで調べたところ、海外では、PSVをはじめ「女性起業家あるいは創業チームに女性がいる会社に投資する(=創業チームに女性がいなければ投資しない)」と明確に宣言しているVCがいくつかありました。

今回はPSV含め5社の「女性起業家・創業チームに女性がいる企業」のみに投資する海外VCを調べたので紹介したいと思います。

※ちなみに、海外においても(そしておそらく日本においても)女性起業家の数は増えているものの、VCからの支援を受ける女性起業家の数はまだまだ少ないのが現状です。2020年1月時点では、米国でビジネスを始めた人のうち40%が女性だったにも関わらず、VCからの資金調達をした女性起業家はわずか3%だったそうです。

1. Pink Salt Ventures(2019年設立、London-Based)

まず、調べるきっかけにもなったPSVについてです。

Samira Ann Qassimによって設立されたPSVは、”Female-led”のプレシード企業に投資するVCです。なお、上記記事によるとPSVは以下のように”Female-led”を定義しているのですがいまいち理解しきれなかったので、わかる方がいたらコメントいただけますと幸いです。(単純にわたしの英語力の問題です)

*PSV define “female-led” to mean teams where the women hold an equal proportion of the founding equity. For instance, companies where women hold 20% of the founders’ shares would not qualify.

PSVはこれまでファンドサイズ£1m($1.3M程度)のマイクロVCとして運営してきましたが、今年の春に2号ファンドの設立を予定しているそうです。PSVの主な投資先としては、更年期女性向けのプロダクトを展開するMpowder等が挙げられます。

2. Female Founders Fund(2014年設立、NYC-Based)

2つめは、有名なFemale Founders Fund(以下FFF)です。個人的には、今回調べる前から知っていた女性起業家を対象としたVCはここだけでした。

FFFは、Anu Duggalらの女性VCによって2015年に設立されたVCです。B2B、Consumer、FintechおよびHealthcareの4カテゴリーにおけるアーリーステージ企業に対して投資を行います。

FFFは投資基準として「創業チームの中に少なくとも1人は女性の創業者がいる企業」を挙げています。なお、Female Founders Fundチーム自身も女性のみで構成されています。

現在は$57Mの3号ファンドを運用しており、主な投資先は女性向けの遠隔診療サービスを運営するユニコーン”Maven Clinic”やママ友版Tinderとも呼ばれる”Peanuts”、先日P&Gに買収された女性向け剃刀ブランド”Billie”等が挙げられます。

3. January Ventures(2018年設立、Boston -Based、Ex- Jane Ventures)

January Venturesは、Jennifer Keiser NeundorferとMaren Thomas Bannonの女性2名が立ち上げたVCです。以前はJane VCという名前でしたが、2020年5月に現在のJanuary Venturesに名称が変更されました。

January VentuesはMedium投資基準を明確化しており、1. 創業チームに少なくとも一人の女性がいること、2. ソフトウェアビジネスであること(消費財やブランド、ハードウェア、バイオ等には投資しない)、3. プレシードまたはシードスタートアップであることを表明しています。

現在は$15Mの2号ファンドを運用しており、主な投資先として、更年期女性に向けたデジタルヘルスサービス”Elektra Health”やスマートピルケースを開発する”Aavia”等が挙げられます。

4. Victress Capital(2016年設立、London-Based)

Victress Capitalは、Lori CashmanとSuzanne Norrisの2名の女性によって設立されたVCです。コンシューマ領域のシード・アーリーステージの企業に対して投資を行っています。

Victress Capitalは”Gender-diverse teams”に投資することを明確にしており、これは創業チームに一人でも女性がいることを意味します。

現在は$22Mの2号ファンドを運用しており、主な投資先として野菜・果物などを使用した冷凍食品のD2C”Daily Harvest”が挙げられます。

5. Auxxo Female Catalyst Fund(2021年設立、Berlin-Based)

Auxxo Female Catalyst Fundはドイツで有名な女性エンジェル投資家、Gesa MiczaikaとBettine Schmitzの2名が今年11月に立ち上げたばかりのファンドです。

母体であるAuxxoは2019年に設立され、エンジェル投資を行うほか、150名を超える女性起業家のコミュニティづくりを行っていました。先日設立されたAuxxo Female Catalyst Fundのファンド規模は$15Mで、プレシードおよびシードステージの企業に投資を行います。

創業チームに最低1名の女性がおり、彼女が20%以上の株式を持っていることが投資の条件となっています。

おそらくまだまだあるのかと思いますが、一定量の情報を見つけ出すことができた5社で一旦は終わりにしたいと思います。

日本においても、ANRIさんが4号ファンドにおける女性起業家比率を20%まで引き上げることを宣言したり、主要なVCの半数が女性起業家への出資拡大を検討していたりと、女性起業家に対するVCからの支援は少しずつ増えていく潮流にあるのかなと思います。

これに対してさまざまな意見があるのは承知の上ですが、個人的には、やはり女性にしか見えない課題は数多く存在すると考えており、女性起業家にVCのリスクマネーが供給されることは結果としてより広範な課題が解決されることに寄与すると思っています。

いち女性VCとして、女性起業家への投資を増やし、少しでも多くの幅広い課題が解決されることに関わっていきたいです。

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Misuzu Matsumoto
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WorkとPrivateがmergeしているベンチャーキャピタリストの日記。Associate @Incubate Fund, Director @Tokyo Women in VC / Former entrepreneur